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3章へ戻る
 ナツメヤシが青い芽をふきはじめた頃、ルルは生まれた。ソロッポウ鹿が、三頭、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたけれども、ルルはだんじてソロッポウではない。
 ソロッポウは、角に美しい枝がない。カルカンの森の広場のすぐ向こうの丘で、ルルはおとうさんにはじめてあったとき、ルルは見た。おとうさん鹿には、そりゃ、すてきな枝のある角があった。
 生まれたばかりのルルは、黄金色の毛がまだ、ぶよぶよしていて、たんぽぽの綿毛のようにあわい白だったけれど、すぐにしゃんと立って、よたよた六歩も歩いた。
「うええええ」、はは鹿のあたたかい胸に、ルルは鼻をすりつけてないた。
「うええええ」
 生まれたばかりのルルは、このとおり、甘えん坊だった。
「ひとのことをひとのことと思わないで、自分のこととして親切にしなくては、いけないんだよ。さびしいことは、だれでもさびしいのだ。ルル。どこまでもそう考えて、生きていっておくれ。」
 ルルのはは鹿(おや)が死んだときに、はは鹿はそう言って死んだ。
「うん。ぼく、ひとに親切にするよ。」
 涙でぼやっとぬれた目で、ルルは、はは鹿に言った。はは鹿のやわらかい耳のところに、いつまでも鼻をすりつけてないた。

  マハーダナカを たすけたルルは
  マハーダナカを せおって行った。
  カルカンの森の メエの木のかげに
  ルルは しずかに マハーダナカをおろした。
  メエの木は ふとい
  メエの木は たかい
  みどりのこずえは 夜空の星を
  さすほどにたかく そびえて見えた。
  だから マハーダナカは メエの木のこかげで
  星をこずえに見てくらした。
  三日と三晩も パパイヤとバナナと
  パンのみやココナッツや マンゴーを食べて
  カルカンの森の メエの木のこかげで
  星をこかげに見てくらした。

  それから 四、五日して マハーダナカは
  ようやく 家に帰って来た。
  帰ってきてから マハーダナカは
  まるで十日も 寝てなかったように
  三日と三晩も つづけて寝た。
  召使いのカロンボは その間中
  なんにもしないで 坐っていた。
  なにしろ 主人のマハーダナカが
  それきり起きないかと 思ったからだ。
  それでも 四日目の朝まだはやく
  マハーダナカは 目をさました。
  寝床の中から 手をのばして
  ちょっぴりだけのこった ほした肉を食べた。
  まるで 骨ばかりの肉を食べた
  それから はじめて言ったものだ
  「おれさまはなあ カロンボ。 そのとき思った。
  けものに いのちをたすけられるなんて、
  なんてまあ 運のつよい男だろうって。
  それで おれさまは こう思った。
  おれさまは 運のつよい男だ
  運のつよい男は なにをやっても、
  きっと うまくいくものだ。
  そう 思うだろ、 カロンボやい。」
  マハーダナカは カロンボに言った
  「ところで これから どうしたらいいんだ。
  宝の地図は もう だめだし、
  町のみんなは おこっていよう。
  あのとき あの鹿にたすけられなかったら。
  そうだ あの鹿だ。あの鹿があった。
  ありゃあ たいした ねうちの鹿だ。
  まてよ、 こりゃあ うまくいくぞ。」

  マハーダナカは 起きあがった。
  「おい、カロンボ 名案だ。」
  そう言って さらさらと 手紙を書いた。
  つぎのように みょうちくりんな手紙を書いた。
  「とこるくて えらと てしがさに 
  ぐすをか しのら かたかしのろ
  いんき むすにく かちのこや
  みのすれ なべつと ひいれいめ
  のつべく とのり よまさおお」

  とこるくてえらとてしがさに
  いったい こりゃ なんの手紙だ。
  カロンボは 読んで びっくりした。
  とこるくてえらとてしがさに
  「ははは どうだい わかるかい。
  これは 暗号というものだ。」
  マハーダナカは えらそうに笑った。
  「そうだカロンボ、 とだなを開けて
  上等のふろしきを もってこい。」
  「ない。
  そうかあ そのおくのたなに 
  おんぼろの ネコの毛皮が あっただろう。
  三味線にしようと 思ってたあれだ。
  かえって ネコの皮のほうが よいかもしれない。
  それを 四角く切り取って、
  ふろしきのかわりに つつむとしよう。」

  そして マハーダナカは みょうてこりんな手紙を
  ネコの毛皮で しっかりつつんだ。
  つつんだ手紙を カロンボにわたすと
  召使いのカロンボに こう言った。
  「おまえは これから ふくめんをして、
  王さまのお城のうら門のまえを
  なんとなく うろうろしてくるんだ。
  そして 門番が「だれだ」と言ったら、
  あわてて 逃げだし この手紙を、
  わざと 落として 走るんだ。
  いいな 落として 走るんだぞ。」
さいごは 両手でにげるまねをした。

 ところが世の中はおかしなもので、ちょうどその頃、王さまのお城で、王子さまが、うなされてめそめそ泣いた。涙をためて目を開けて、ぱちくり言った。
「お母さま、夢見た。こわい夢見たよ。ぼくがね、お母さま。いつものように、どこかへ遊びに行きたいと思って、親指をこんなふうにぎゅっと立ててね。えいやあくるん。と言ったらね。ふわりと、鳥みたいに飛んだんだよ。だから、お城の石垣も、ベナレスの市場も下に見てね。ふわりとガンジスの流れも飛んで、どこか知らないふかあい森の、背の高い木のこずえの枝に、よいとつかまって下りたんだ。すると、その木の下の方に、真っ白な綿のような花が咲いててね。きれいな花だなあと思ったらね。その花のいっぱい咲いたしげみのかげに、きれいな優しい目をした鹿がいたんだ。ちょうどお月さまが照っててね。鹿の角が銀色に光ったよ。
 あんな鹿、ぼく、欲しいなあ。お母さまも、きっと、欲しがるだろうなあ。そう思って見てたらね。まわりがきゅうにがやがやしてね。兵隊がいっぱいやって来たの。兵隊はたいこを持っててね。どんどんどどどんって、叩くんだよ。そして、弓矢も持っててね。鹿を撃とうとしてるんだ。
 ぼくが、「ああっ」って声を出したらね。茂みのかげにいたやせっぽちの水色のシャツの男がね。ぎろってぼくの方を見たんだよ。
 ああ、こわかった。だからぼく、目が覚めちゃった。あの鹿、撃たれなかったろうか。ねえ、お母さま。あの鹿、うまく、逃げたかしら。」
「だいじょうぶよ。チラタ。夢ですもの。うまあく、鹿は、逃げられてよ。」
 そう言って、お母さまの王妃さまは、王子のチラタのお布団のえりを、ぽんぽんとかるく叩いてくださった。だから、安心したチラタの王子さまは、すぐにすやすやと寝息をたてた。 
 
 ごろつくぽお。ごろつくぽお。
 その頃、お城の門の外では、ふくろうが気味の悪い声で鳴いて、長いお城の石垣が、ぼやっと十三夜の月に照らされた。気味の悪いなまり色のかげを地べたに写した。そこへ誰かの足音がした。夜更けにお城の北門の前を、ぴたぴたぴたとぬれたような足音がした。
 その夜は門番のカルドンが、かぜをひいてねてたので、子どものホツが、ひとりで坐っていた。するとつめたいこおりのような手がのびて、うしろから門ばんの子のホツの首をびろっとなでたような気がした。「ひえっ」っととびあがった門ばんの子のホツは、勇気をふるって、「だれだ」」と言った。
 ぴたぴたぴた ぴたぴたぴた
 お城の石がきのずっとはずれに、たしかに足音をきいたようだったけれど、あたりにはだあれもみえなくて、へんちくりんな四角い密書のようなつつみが、地べたにひとつだけころがっていた。
「なんだ。これ?」
 ホツはひろってあけて見た。
 
  とこるく てえらと てしがさに
  ぐすをか しのらか たかしのろ 
  いんきむ すにりも のくかちの
  こやみの すれなべ つとひいれ
  いめのつ べくとのう おこりたでぶ

 ふふん。これは、たしかに密書だ。これは、隣の国のブデタリコ王からの命令書だ。それにしても、ずいぶんかんたんな暗号だな。子どものボクにもわかるんだもの。」
 ホツのひろった手紙は、朝になるとすぐさま大臣にとどけられた。ホツにもすぐに読めたくらいだから、大臣にも読めた。読んだ大臣は、王さまにお見せした。もちろん、王さまも、すらすらとお読みになった。王さまは、すぐに大臣に言った。
「となりの国のブデタリコ王に、この国のたからをとられてたまるか。きんいろの鹿をすぐに探してつかまえてこい。」
言われたが大臣は知らなかった。五人いる大臣が、五人とも知らなかった。王さまに密書をお見せした大臣は、お城でも一番えらい大臣だった。口ひげが鼻の両側に反り返ってのびていた。
「ところできんいろの鹿なんてほんとうにいるのか。」
 大臣は、つばきでそおっと自慢のひげをなでつけてみた。いつもそうするとよい考えが浮かぶのだ。
「密書には、きんいろの鹿は、ベナレスの森とかいてある。」
「ベナレスの森は、深くて広い森だから金色の鹿が一頭ぐらいいてもおかしくないな。」
「でも、あの深い森を、どうやって探すのだ。」
 残りの四人の大臣も、短いけどひげがあった。四人ともひげをなでつけて考えたが、よい考えは浮かばない。
「大臣の知らないことを、家来たちが知ってるわけがない。そうだ。こんなときには、いつものように国中のみんなにおふれを出して、国中の者たちに聞いてみるのが一番よい。」
さすがえらい大臣が、一番に思いついた。
「それです。それがいい。わたしもそう思ってたところです。」
「そのとおり。」
「それがいい。」
「さっそく、おふれを。」
 そこですぐに、おふれ係の大臣が、きんごろどんと合図のドラを叩いた。すると、ドラと太鼓を乗せたゾウが五十頭に兵隊が五十人。お城の広場にすぐに集まった。
「いいか、これから行って、どんがらどんのどんとなるべくにぎやかに、国中のみんなに聞いてこい。金色の鹿がどこにいるか。なるべくおおぜいにきいてこい。わかったか。よーし。ゾウ隊、前へ。きんごろどん。」
大臣の合図で、五十頭のゾウは五十人の兵隊を乗せて、だすんだすんと進んだ。 北の門から五頭、南の門から十五頭、東の門から十五頭。西の門から十五頭。いつものとおりにお城の外の街や、田舎へと散っていった。ホツのお父さんの受け持つ北の門は、一番人通りの少ない通りだった。だから、ゾウは五頭だけさ。それでも、賑やかな街の大通りよりどんがらどんのどんは、遠くまで聞こえた。人通りが少ないからあちらこちらから子どもたちがやって来て、五頭のゾウ隊の後ろから行列を作って並んで歩いた。
 どんがらどんのどん、どんがらどんのどん
 子どもたちは、それぞれ小さな太鼓や板やナベを持ってきて、兵隊と一緒に叩いて行進した。ホツも、もちろんついて行ったさ。
 
しかのなかなる しかのおう
きんいろのしかの すむところ
しるものはだれ こたえるはだれ
もりかしげみか はた、やまか
きんいろのしかの すむところ
しるものはだれ こたえるはだれ

 五十頭のゾウには一頭ずつに、ちゃあんとこんなふうに書いた腹がけがしてあった。子どもでも読めるようなひらがなだったから、子どもたちも、背のびして、腹がけの文字を読んだ。兵たいはひとりひとりが、どんがらどんのどんと、たいことドラをたたいたから、国中はまるでおまつりのようで、三才の子どもまで、「きんいろの鹿はどこにいるの」ときいた。
 その子のおかあさんが、ねんのために、うらのどぶ板をはがしてみると、中から、こげちゃいろのカワウソがいっぴき、ひげをぴいんとたてて、あわててとんでにげた。
 だから、その子は、それからずっと、カワウソは、どぶ板のしたにいるものだなと思った。しかし、どぶ板のしたに鹿はいない。いるわけがない。
「きんいろの鹿は、どこにいるの」と、三才の子どもまできいたけど、やっぱり、だあれも知らなかった。カワウソはいたけど、きんいろの鹿はいなかった。
 まる一日、どんがらどんと、兵隊を乗せた五十頭のゾウが歩いたけれど、だあれひとり、お城へはこなかった。
 その日のゆうがた、かぜがなおって父親のカルドンがもどったので、ホツは家に帰った。もうこん夜から門番ではなく、ただの子どものホツになった。きのうのことで、おこずかいをたくさんもらった。ポケットには王さまからいただいた十五ルピイのごほうびが。父親からもらった門番の代わりをしたおだちんの一ルピイ。あわせて十六ルピイの銀貨が入っていた。しばらくは、どんがらどんで街中がお祭りだ。明日も明後日も、学校はお休み。金色の鹿を校長先生も探しにいくそうだ。ホツは、どこへ行ってもよかった。ところが、どこへも行かなかった。
 どうしたんだろ、いったい。ショウじゃなくてもきいてみたくなる。肉屋の子のモクでさえ、おかしいなと思う。
 お城の三ばんめの石がきの横の、ひみつのぬけ道から、お城の王子さまのチラタまで、どうも気になってホツの家まできてみた。それでも、ホツはぼんやりすわっていた。歌のじょうずなネンが、そんなホツのことを歌にしてうたった。

  黄色いどべいの くずれかけたどべいの
赤っぽい鉄のくぐり戸のまえで
空の一点 見つめてる
「なにしてるの きみ」
男の子の名前は ホツ
両手でひざを まるっこくかかえて
ひとりぼっち ぼんやり
「どうしたの ホツ」
すきとおった目 うす茶色の髪
口はへの字 手は石のよう
あごに親ゆび ぎゅっとあてて
空の向こうを 見つめてる
「どうしたの ホツ」

「なにか 見たの」
「もしかして・・・・鹿を見たの。」
 
 いつのまにか、ショウとモクもきていた。チラタとネンとショウとモクは、ホツをみつめた。みんなだまってホツの話すのをまった。
「じつは昨日の夜、ぴたぴたぴたという、いやあな足音を聞いた夜。そう、あの密書を拾った夜。」
「・・・・・・」
「小さなお坊さんに会ったんだ。」 
「小さなお坊さん。」
「子どものおぼうさん。」
「うん、小さいけど、たしかにお坊さんだった。頭もつるつるにそってたし、黄色い衣を着てた。アナンという名前だって。」
「アナンさん。」
「そのアナンさんが、ヘンなことを言ったんだ。ルルは、だいじょうぶだろうかって。」
「ルル?」
「ルルは、あの鹿の名前なんだ。」
 ショウとモクとチラタとネンは、顔を見合わせてうなづいた。
「チラタが、夢に見た金色の鹿だよ、きっと。」
「アナンさんは、森へ行ったんだ。ルルは森のどこかにいるはずだって。」
「ぼくも行きたかったけれど、お父さんのかわりをしてたので行けなかったんだ。」
「明日。みんなでアナンさんを探そう。いいね。明日の朝、ここに集合だ。アナンさんを見つければ、金色の鹿に会えるよ。きっとね。」
ショウとモクとチラタとネンとホツは、そう約束して別れた。その夜、ショウとモクとネンとホツも、ルルの夢を見た。真っ白な綿毛のような花がいっぱい咲いたしげみのかげで、静かに眠っているルル鹿の夢だ。

さて、その次の朝まだ早く。ホツは、ひとりでにやにやしてた。いや、ちがう。ホツのとなりにアナンさんがいた。そうだ、あのちびっ子のお坊さんのアナンさんだ。アナンさんも、にこにこ笑っていた。なぜ?そりゃ、キミ。思い切ったように空が青くすんでいるときは、だれだって楽しくなるだろうさ。それに、アナンさんは、みんなが探しに出かける前にもどって来たんだからね。
 ホツは、うれしくなっていつものでたらめの歌をうたった。

お日さまはかんかん森の上
カシワの葉っぱは きんきらりん
カエルの背中も ウルシ色
つやつやうるしの ウルシ色
アナンさんの頭も ウルシ色
つやつやうるしの ウルシ色

「おはよう。ホツ!ごきげんだね。」
「おはよう。モク!この小さいお坊さんが、アナンさんだよ。」
「おはようございます。アナンです。昨日の夜は、ホツさんのお父上の門番小屋に泊めていただきました。」
「おはようございます。アナンさん!それで、ホツといっしょにいるんですね。」
「ええ。ホツさんが聞いたぴたぴたぴたは、下男のカロンボの足音です。」
「すると、チラタが夢で見た水色のシャツの男は、マハーダナカだ?」
「あ、チラタ!おはよう。早かったね。」
「お城の石段がかけててね。ちょっとだけすべってこわかったよ。」
「ころんだの?」
「ううん。ころばなかった。」
「アナンさん。この子はチラタ。お城の王子さまだよ。」
「王子さまですって?」
「うん。でも、チラタはともだちさ。ボクと同い年なんだ。」
「そうですか。わたしはアナン。お釈迦さまの弟子のアナンです。」
 チラタも、こくりと頭を下げた。そこへショウとネンもやって来た。
「おはよう。」「おはよう。」
「みんな来たね。じゃ、出かけよう。」
「うん。行こう、カルカンの森へ。」

 さて、マハーダナカは、何をしてたかというと、まだ寝床の中にいた。寝床から右手をのばして、敷物の上に出しっぱなしのごちそうのお皿から、豚の足を取ってかじった。
「ふん、豚の足も、なかなか美味しいぞ。」
 そう言って舌で鼻の頭をなめた。

   どんがらどんのどん どんがらどんのどん
   しかのなかなる しかのおう
   きんいろのしかの すむところ
   しるものはだれ こたえるはだれ
   もりかしげみか、はた、やまか
   きんいろのしかの すむところ
   しるものはだれ こたえるはだれ 

   マハーダナカは ねどこにいた
   ひとつだけのこった ぶたのあしをかじった
   くちゃくちゃくちゃと ぶたのあしをかじると
   ねどこでねたまま のびを一つした

   どんがらどんのどん どんがらどんのどん
   しかのなかなる しかのおう
   きんいろのしかの すむところ
   しるものはだれ こたえるはだれ
   もりかしげみか、はた、やまか
   きんいろのしかの すむところ
   しるものはだれ こたえるはだれ

   きのう一日、五十頭のゾウと
   五十人の兵隊が都中を歩いたのに
   だれ一人お城に来る者がいなかったので、
   五人の大臣は考えた。
   五人で考えたから五倍もいい考えが浮かんだんだ。
   「ゾウ隊を、百頭に増やしましょう。」
   「懸賞金をつけましょう。子ゾウ三十頭に金貨を三千るぴい。」
   懸賞金は金貨三千ルピイ。子ゾウが三十頭。これならわたしでも探したくなる。
 
   きんいろのしかの すむところ
   しるものはだれ こたえるはだれ
   しらせたものには 三千ルピイ
   どんがらどんのどん どんがらどんのどん
   こたえたものには 三千ルピイ
   どんがらどんのどん どんがらどんのどん

   ベナレスの都は にぎやかになった。
   お寺というお寺で ゴマがたかれ。
   お坊さまというお坊さまが、朝からおいのりした。

   しか、しか、しか、きんいろのしかよ。トテヤンピィ。
   しか、しか、しか、きんいろのしかよ。トテヤンピィ。

  ゾウ隊の後ろには子どもたちどころか、大人たちの行列も出来た。
  行列が出来ると、物売りも集まる。
 
  ええ、バナナにパパイヤ パイナップルに
  とりたてのワニの子のから揚げはいかがですか
  ええ、バナナにパパイヤ パイナップルに
  きりたてのサルのしっぽはいかがですか

  どんがらどんのどん しらせたものに三千ルピイ
  どんがらどんのどん こたえたものに三千ルピイ
  ええ、バナナにパパイヤ とりたてのワニの子
  ええ、バナナにパパイヤ きりたてのサルのしっぽ

 これでは、マハーダナカも寝てるわけにはいかない。顔をあらって歯をみがいて、頭にごま油をべとべとつけた。お気に入りの水色のシャツに赤いパンツ。ぴかぴかの白いエナメルの先っぽのとがった靴をはいた。 
「さあ、マハーダナカさまのお出ましだ。」


ルルという鹿の話 4